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  • Takahiro Sakai

ペトロフ・ピアノ レコーディング@Sala MASAKA


4月23日に東戸塚にある Sala MASAKAさんで、ピアノのレコーディングをしてきました。ピアニストはハンガリー・リスト音楽院に留学中の三谷弘貴さんで、一時帰国しているタイミングでの収録となりました。今回使用したピアノはチェコの名器ペトロフで、株式会社ピアノ・プレップさまのご協力により極上のコンディションに仕上げていただいたPETROF P194 Stormを使用することができました。

ペトロフでのレコーディングは前々から三谷さんの希望でもあり、著名なコンサートホールや劇場、プライベートな音楽空間設計で高い評価を得ている株式会社ACT環境計画さまの設計による、Sala MASAKAさんで録音できたのは、これ以上ないような幸運でした。ピアニスト、ピアノ技術者、スタジオオーナー、レコーディングエンジニアが、良い音楽を良い音で残したいという思いが重なったようなレコーディングで、その思いが伝わるような音に仕上がったと思います。

私としても、こんな幸運な機会に恵まれて感謝の気持ちでいっぱいです。

ピアニスト:三谷 弘貴

http://hirotakamitani.wix.com/piano

ピアノ:PETROF P194 Storm

http://www.pianoprep.jp/

収録場所:Sala Masaka

http://salamasaka-home.blogspot.jp/

スタジオ設計:株式会社 ACT環境計画

http://www.actplanning.jp/index.html

録音:STUDIO 407

http://www.studio407.biz/

ペトロフの創立者であるアントニン・ペトロフは、父親の建具用の仕事場で最初のグランドピアノの製作を始め、これまでに50万台以上のピアノが製造されています。数々の賞を受賞したペトロフピアノは1935年ブリュッセルで開かれた世界博覧会では最高の栄誉である、グランプリを授与されています。第一次世界大戦後チェコは数百年の悲願であった独立を果たして、チェコスロヴァキア共和国が建国し、そこからの20年間は、中欧の文化圏の一大拠点として数多くの芸術家が活躍した芸術のユートピアを形成しました。ペトロフもそんな環境の下で優れたピアノを作り続けました。

ペトロフの持つ透明で純度高く澄みきった音色は、ボヘミアの大地が長い年月をかけて育んだ音色と言われています。特に弱いタッチにおいても、その美しい魅力的な音色を発揮します。クラフトマンシップが活きる手作業工程の多いペトロフのピアノは、音質に優れた選りすぐりの天然乾燥木材を用い、現地で約数年の自然乾燥を行い、仕上げに一ヶ月間乾燥室に入れられ、ピアノに最適な木材で作られます。ケースは、べーゼンドルファーと同じく板に切り込みを入れて曲げて製作され、木材を緊張させにくく、木の響きを生かす特徴を持っており、透明で澄み切った音色を生み出す秘密にもなっています。

ピアノプレップさんは、こうした歴史に支えられたペトロフに愛情を注ぎ、多くのユーザさんからの厚い信頼を得ている会社です。調律のみならずプレップアップ、カスタマイズ、と言われる作業を丁寧に行い、演奏者の好みの音質、タッチに近づける作業を完了した極上のペトロフをピアニストのもとへ届けています。今回のレコーディングに準備されたペトロフも、一音弾いただけで薫るような気品のある音に仕上がっており、アクションやハンマーのコンディションも細心の心配りで調整されたことが感じられ、三谷さんも自分の音楽世界を十全に表現できたのではないかと思います。

Sala MASAKAさんは、28畳大のスペースで天井が6mとゆとりがあり、たっぷりした空気感が溢れる空間です。響きはとてもナチュラルで、白を基調としたモダンなデザインとほのかに木の香りがする穏やかな印象。とかくレコーディングは張りつめた空気が漂うものですが、こうした穏やかなオーナーさんの心配りが感じられる空間は、なかなか得難く素晴らしいと思いました。自然な気持ちで演奏とレコーディングに集中できます。

セッション前にオーナーさんからスタジオ設計の説明をお聞きしましたが、音響的に最善を尽くした拘りの設計、部材選択、集中コントロールできる照明設備、集う人が心地よく時間を過ごせるための工夫など、音楽環境創造の設計思想が通奏低音のように随所に感じられ、設計者のお人柄が伝わるようでした。演奏会運営の配慮もきめ細かく、2階部分に設置された控室には、デザイン性の高い鏡やデスク、演奏前の緊張を和らげるようなインテリアが配してあり、演奏者専用のトイレも嬉しい配慮だと思いました。

レコーディングは、ペトロフの響きを活かした曲が選択され、殊にチェコの名曲、ヤナーチェクのピアノソナタ“1905年10月1日”は、三谷さん格別の思い入れがある曲だったのではないかと思います。副題の“1905年10月1日 街頭にて”は、当時チェコの支配層であったドイツ系市民と地元チェコ人との抗争を鎮めるため出動した軍隊にチェコ人の青年が射殺された悲痛な出来事を題材に書き上げた全2楽章構成のソナタです。思いを込めた三谷さんの演奏は1テイクでOKとなり、録音しながらも心に迫るものがありました。



#録音セッション

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