「ソプラノサックス&ピアノ」デュオの収録
- STUDIO 407 酒井崇裕

- 4月3日
- 読了時間: 3分
更新日:6月2日
2月27日、杉並公会堂小ホールにて、ソプラノサックス&ピアノのデュオによるコンサートのライブ収録をしてきました。コンサートのタイトルは DANS LE SILENCE――フランス語で「静寂の中で」を意味します。その言葉の通り、静けさに寄り添うように、あるいはそこからゆっくりと滲み出すように、音楽は生まれていきました。

ソプラノサックスを奏でるのは、石田寛和さん。パリと東京を拠点に、サックス奏者・作曲家として活躍しています。劇団への楽曲提供、自身の作品でのアーティストとの共演など、多方面での活動を展開し、サックスの可能性を追求し続けています。2023年には、フランス在住のピアニスト Masaé Gimbayashi さんのアルバム『Odyssey』にゲスト参加。さらに、パリ在住のドラマー Hidéhiko Kan さん率いる日仏プロジェクト「Tokyo Paris Express」でもアルバム制作を手がけ、精力的に演奏活動を行っています。そのサウンドは、ジャズやクラシックの枠を超え、独自の音楽世界を築いています。
一方、ピアノを弾くのは佐藤浩一さん。ジャズ、即興、室内楽、ポストクラシカル、ポップス、映画音楽と、多彩なジャンルを横断するピアニストであり、作曲家・編曲家でもあります。繊細なタッチで研ぎ澄まされた音色を奏で、独自のメロディーとハーモニーセンスを持つ彼の音楽は、多くの音楽家から厚い信頼を得ています。2021年には、自身が作曲したソロピアノと弦楽カルテットを含むアンサンブルを収めた2枚組のアルバム『Embryo』をリリース。ピアニストとしての表現力と、作曲家・編曲家としての緻密な構成力を存分に発揮した作品となりました。

この夜、二人が奏でたのは、すべてオリジナルの楽曲でした。互いの作品を交互に紡ぎながら進んでいくプログラム。旋律は時にやわらかく、時に鋭く交差しながら、聴く人の記憶の奥深くへと届いていきます。まるで、風が木々を揺らし、水面に波紋を描くように。
印象的だったのは、石田さん作曲の《L’air du vent 風のうた》です。微細な音の粒がゆっくりと空間に広がり、やがて形を持たぬ風景を描き出しました。その音は軽やかでありながらも、どこか懐かしく、まるで遠い記憶の中で何度も聞いたことがあるような旋律でした。
そして佐藤さん作曲の《Hua》。ピアノの静謐な響きが、そっと心の深い場所に染み込んでいきます。シンプルな旋律の中に秘められた豊かな陰影、言葉では捉えきれない感情の揺らぎ。音楽が語るものは、聴く人それぞれの心の中に異なる物語を生み出していきました。

収録した音源は、編集とマスタリングを経てアルバムとしてリリースする予定です。このデュオは発足して間もないとのことで、これからの活動がとても楽しみです。静寂の中に生まれた音たちは、これからも誰かのもとへ届き、新たな物語を紡いでいくことでしょう。
収録した演奏から2曲ご紹介します。




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