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  • 執筆者の写真Takahiro Sakai

大泉学園ゆめりあホール アルバム・レコーディング 吉永哲道さん

更新日:2021年8月21日


5月7日に大泉学園ゆめりあホールでピアノ作品のレコーディングをしてきました。ピアニストは吉永哲道さんで、J.S.バッハの作品とロマン派を中心とした小品全12曲を収録しました。

吉永さんは、名古屋市の高等学校音楽科を卒業後、1998年9月よりモスクワ国立音楽院へ留学し、10年に渡り同音楽院で研鑽を積まれました。多くの専門家からの評価も高く、「静寂の水面に滴る水のように、彼の音は波紋を広げる。それでいてどんなフォルティシモでも、ピアニシモが聴こえてくる」とも評され、これまでに、ピアノを田中須美子、内藤江美、江口文子、國谷尊之、浦壁信二、ピャトラス・ゲヌーシャス、マクシム・フィリッポフ、ダリヤ・ペトローヴァ、故ヴェラ・ゴルノスタエヴァ、大野眞嗣各氏に、伴奏法をマルガリータ・クラフチェンコに、室内楽をニーナ・コーガンに師事されておられます。帰国後は、ソロ、二台ピアノ及び伴奏等の分野で演奏活動を展開するとともに、後進の指導にも力を注いでおられます。


収録場所の「大泉学園ゆめりあホール」は吉永さんがご指定されました。キャパ176席の小ホールで、楽器のクリアネスを活かす方向で設計されたような印象を受けました。残響と表現するよりは、ステージ空間に放たれた後のアンビエント成分が心地よく楽器自体の響きとミクスチャしていく感じです。ソロ演奏や小編成の室内楽など、楽器のディテールや楽曲の書法の緻密さを明瞭に収録するのによいホールだと思います。一言で美音と言ってしまうには表現し尽くせないのですが、吉永さんのタッチとペダリングから生み出される響きは、静謐な佇まいの中にも透明で揺らぎのない芯が感じられ、放たれた音は、このホールの特性とあいまって、音楽的な構造を克明に描いていきます。吉永さんは、鍵盤に触れる感触を大切にしながらホールに放たれた音を確認している様子でした。

テスト録音を聞きながら、その響きの佇まいをリアルに収録できるマイクセッティングに調整していきます。そもそもピアノは木の楽器ですが、フレームや弦は金属で、異質な素材が複雑に響き合う構造になっています。異質な素材はそれ特有の音響特性を持っていますが、それが心地よく融合するポイントがあり、マイクの距離や角度、そしてレベル設定を調整しながら、いちばんピアノという楽器をリアルに描写できるセッティングを探っていきます。楽器自体の響きに加え、ホールの響きも時間的に影響してきますので、空間的な配置だけでなく、時間軸で響きを確認しながらセッティングを進めることも大切です。

収録した音源はCDとしてリリースされるとのことで、今から楽しみです。収録した中から1曲、ご紹介します。



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