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執筆者の写真Takahiro Sakai

ピアノ&Voice レコーディング( 府中芸術の森・ウィーンホール)

更新日:2021年8月21日


6月14日に府中芸術の森劇場・ウィーンホールで、ピアノと声楽の収録をしてきました。ご依頼いただいたのは小金井音楽アカデミー学院長の玉木豊さんです。玉木先生は、リルケの詩集から想起される世界をピアノと声によって即興で描いていく融合芸術の試みをされています。全11曲、ノンストップ一発録りの収録で、やりなおしなしの一回性の音楽世界です。


ウィーンホールは、天井に432本の白い筒状のパイプの棒が設置されてあり、ホールの残響時間を調節することができます。装置は電動で調節が可能で、空席時には2.16~2.67秒、満席時には1.8秒~2.2秒まで変化させることが可能です。長さ2.2メートルのパイプをいっぱいに出した状態と格納した状態では、約0.5~0.6秒の残響の差をつけることができる計算です。


昨年秋に収録した時は、この装置を100%出してレコーディングしたのですが、今回は、50%にしてみました。昨年の音源と今回の音源を聞き比べてみると、マイクセッティングは同じなのですが、残響時間の差もさることながら、音質のキャラクターがかなり違い、この装置の効果を確認することができます。こうしたアコースティックバランスによる響きの調節は、デジタル処理で残響を付加するのとは違い、複雑性が大きく異なり、響きの豊かさも深く、レコーディングする楽しみもひとしおです。

豊かな声量で歌いながらピアノを弾く玉木先生の演奏は、サスティンペダルを踏んだ時に、声とピアノが共鳴して、独特な音場をつくります。加えて、その響きはホール全体に広がっていって、雄大で幻想的な雰囲気を醸し出します。マイクセッティングは、ピアノの大屋根を取り外し、ピアノ上部から放射される音と歌声が融合してホール全体に音が浸透していく音場を捉えるよう工夫しています。イメージとしてはピアノと声を震源地とした音が時間軸に沿ってホール全体に広がっていく状態を、良いポイントでピックアップしてあげるというコンセプトです。声とピアノを音楽的バランスしながら、時間軸の変化と響きの豊かさを狙った複数マイクのバランスを取るため、テスト録音を繰り返します。大屋根を外したピアノ上部に放射される音は、想像していたよりピュアで、高域と低域が素直に伸びており嬉しくなりました。ピアノと声が共鳴している様子もリアルに響いています。


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