実地検証を経ての展望:マイクロ多孔質吸音球体バッフルABステレオ録音
- STUDIO 407 酒井崇裕

- 2025年11月12日
- 読了時間: 3分
更新日:2025年11月13日

はじめに:マイクロ多孔質吸音球体バッフルABステレオ録音
より自然なステレオ録音を目指して、マイクロ多孔質吸音球体バッフルを用いたバッフルABステレオ録音方法を2025年6月より検討中である。シミュレーションと簡易実験を経て、これまで3回、設定を変えてコンサートホールでの実践レコーディングを行った。期待する効果は確認できたものの、いまだ調整途上にあり、次回の実地検証のレコーディングに向けて、ジャクリンディスク(OSS標準)との比較を整理し、調整ターゲットを絞ることとした。

マイクロホン近傍にバッフルを設置する方法には、ジャクリンディスクをはじめとし、アンドレシャルランのテート・アルティフィシエル(シャルラン・ヘッド)などがあり、また、球体を利用する方式にはSCHOEPSのKFMシリーズ、Neumann KFM 100などがある。
本システムの意図は、ダミーヘッドによるHRTF(頭部伝達関数)を用いたバイノーラル録音ではなく、ラウドスピーカでの自然なステレオ再生を目指すものであり、バッフル型の派生形と位置付けることができる。従って、Neumann KU100が意図する録音とは違い、両耳間時間差(ITD)および両耳間レベル差/強度差(ILD/IID)のコントルールによって、より自然なステレオ録音を目指す。
時間差や強度差は周波数に依存的であり、従って、バッフルの形状やサイズ、また、マイクロホンの間隔が鋭敏なパラメータとして効いてくる。OSS標準との比較差異を洗い出すことで、本システムの精度向上を探りたい。
両システムは一長一短
結論から言えば、バッフル型ABステレオの両者は一長一短でトレードオフの関係が見て取れる。円盤型のバッフルを用いるジャクリンディスクは、エッジ回析に起因するフィルタリングによる音のカラーレーションが原理的に発生するのに対し、球体を用いる本プロトタイプは球面の滑らかなクリーピングにより周波数の乱れが最小限に抑えらる。一方、標準ジャクリンディスクが、ITDヌル周波数とIID開始周波数の同期を取ることによってコムフィルタリングの問題をエレガントに目立たなくしているのに対し、現状のプロトタイプの設定では周波数の同期が崩れ、ある範囲の周波数帯で脆弱性を内包している。この音響的な弱点をいかに解決していくかが今後の課題となる。
言うまでもないが、机上の計算や理論枠組みは、信頼に足るデータとは言え、あくまでも検討を進めるための材料である。実際のレコーディングにおいては、何よりもヒアリングテストが重要であり、すなわち、耳で聞きながら精度を上げていくことが最重要視される。




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