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アンサンブルKATOO ~「光」をめぐる壮大な旅~ 磯子公会堂

  • 執筆者の写真: STUDIO 407 酒井崇裕
    STUDIO 407 酒井崇裕
  • 7 日前
  • 読了時間: 5分

アンサンブルKATOO 第19回定期演奏会

12月14日、磯子公会堂でアンサンブルKATOOの定期演奏会を録音してきました。

演奏会を、ひとつのまとまった物語として考えたことはありますか?ただの名曲のコレクションではなく、最初から最後まで一貫したテーマで紡がれる壮大な旅。アンサンブルKATOO 第19回定期演奏会のパンフレットは、まさにそんな深い物語への招待状でした。


アンサンブルKATOO 第19回定期演奏会

アンサンブルKATOOが掲げたキーワードは「人類の歴史と想像力」。そして、そのすべてを貫く壮大なテーマが「光」でした。この演奏会がいかにして音楽を「光」をめぐる深遠な探求へと昇華させたのか、プログラムに隠された4つ仕掛けをご紹介します。


「光」の意味が4段階で進化する物語

この演奏会の4つのステージは、ランダムに曲が並べられているわけではありませんでした。そこには、「光」というテーマの意味が明確に進化していく、計算され尽くした物語の構造が存在したのです。

  • 第一ステージ:問いかける「生命の光」 ブラームスの楽曲で構成されたこのステージは、旧約聖書のヨブ記をテキストに「なぜ神は苦しむ者に光(=命そのもの)を与えるのか」という根源的な問いから始まります。それは試練の中で力強く育っていく、いわば「内側から生まれる信仰の光」を描いていました。

  • 第二ステージ:降り注ぐ「祝福の光」 現代アメリカの作曲家エレイン・ヘイゲンバーグ(Elaine Hagenberg、1979年 - )の作品が並ぶこのステージは、第一ステージの重い問いかけに対する一つの応答のようでした。神の愛や希望をより直接的に描き出し、まるで天から降り注ぐ「祝福の光のようなもの」を感じさせます。

  • 第三ステージ:見出す「自然と想像力の光」 木下牧子作曲の合唱組曲が演奏されるここでは、光の焦点が神から「自然の中に存在する普遍的な光」へと移ります。そしてさらに重要だったのは、文明でも自然でもない「第三の光」、すなわち「人間が持つ想像力そのものが放つ光」という新しい可能性が示されたことでした。

  • 第四ステージ:日常に灯る「個人の光」 J-POPの合唱編曲作品で構成された最終ステージは、テーマを私たち自身の日常へと引き寄せます。映画や漫画の物語を通して、人と人との関係性や個人の強い意志、現代を生きる葛藤の中にある希望といった、最も身近な「個人の光」を浮かび上がらせたのです。

そして、この「光」の意味の変遷という物語を、さらに立体的で奥深いものにしていたのが、プログラム全体に仕掛けられた二重の構造でした。


プログラムに隠された「縦と横の軸」

この直線的な物語の裏には、プログラム全体を織りなすもう一つの知的な構造、いわば音楽のタペストリーを支える縦糸と横糸が存在していました。それは、コンサート全体を貫く2つの「軸」によって作られた、対照的なマトリクス構造です。

  • 第一の軸(地域/ジャンル): 第一・第二ステージが海外の宗教曲で構成されているのに対し、第三・第四ステージは日本の作品で、後半にはポピュラー音楽も含まれていました。まさに「対象的ですね」という言葉がぴったりです。

  • 第二の軸(時代): もう一つの軸は時間です。第一・第三ステージが古典的な名曲である一方、第二・第四ステージは現代の作品で構成されていました。

この二重の構造は、聴き手に多角的な視点を提供しました。指揮者の千葉悠平さんはパンフレットの中で、この構造を楽しみながら「想像力を大いに働かせて楽しんで欲しい」とメッセージを寄せていました。


演奏者が編曲家に。団員の手による世界初演

最終ステージのJ-POPプログラムには、聴衆を驚かせる事実がありました。演奏される楽曲のうち2曲の編曲が、なんとアンサンブル加藤の団員自身の手によるものだったのです。

これがなぜ特別かというと、それは「この合唱団の声、この響きを1番よく知る人が作った音楽」を聴けるということに他なりません。これは、第三ステージで提示された「想像力の光」が、ついに演奏者自身の創造性という形で結実した瞬間と言えるでしょう。

さらに、そのうちの1曲である「群青」(人気漫画『ブルーピリオド』主題歌)は、この演奏会が世界初演でした。


J-POPに隠されたクラシック音楽の「引用」

最後に紹介するのは、「群青」の編曲に隠された仕掛けです。

この編曲には、ムソルグスキーの有名な組曲「展覧会の絵」の「プロムード」のモチーフが巧みに引用されました。これは単なる遊び心ではありません。編曲者は、聴き手に対して「まるで美術館で1枚1枚の絵画を鑑賞するように物語と音の展開をお楽しみください」というメッセージを込めたのでしょう。

この仕掛けによって、「スパークル」や「アルデバラン」といったステージ上の各楽曲が、それぞれ異なる「光」を描いた一枚の「絵画」として立ち現れてきます。第三ステージで示された「想像力」というテーマが、ここで聴き手自身に手渡され、音楽を解釈する主体となるよう促されるのです。


「光」をめぐる旅は続く

神への根源的な問いから始まったこの演奏会の旅は、雄大な自然を経て、最終的には私たち一人ひとりが日常の中で見出す個人的な光へとたどり着きました。

パンフレットの団長の挨拶には、「なぜ生きるのか」という問いへのヒントが音楽や人との繋がりの中にあるのではないか、という言葉が綴られていました。この壮大な旅は、その答えが壮大な神話や自然の中にだけあるのではなく、私たち自身の解釈と日常の中にあることを示唆しています。

だからこそ、コンサートは最後にこう問いかけるのです。この問いに答えることこそが、音楽を聴くという体験を超えた、真の「想像力の旅」の始まりなのかもしれません。


そして、この「光」をめぐる旅は、来年へと続いていくことがアナウンスされました。来る2026年12月13日 横浜みなとみらい小ホールで第20回定期演奏会が開催されることが決定されているそうです。どんな響きに出会えるのか、今から楽しみです。


当日の演奏会より2曲をご紹介します。




 
 
 

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