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チャリティー・デュオ・リサイタルのレコーディング

  • 執筆者の写真: STUDIO 407 酒井崇裕
    STUDIO 407 酒井崇裕
  • 2014年8月21日
  • 読了時間: 5分

更新日:2月13日


8月11日(月)、ルーテル市ヶ谷ホールで、ヴィオラとピアノのチャリティー・デュオ・リサイタルのレコーディングをしてきました。演奏者は、田端誠治さん(ヴィオラ)、佐藤瑞恵さん(ピアノ)で、音楽を通じ、東日本大震災で被災された方々へ心の安らぎと生きる力を届けたいという願いを込め、これまで様々な活動をされておられます。Vol.2と題されたこの日のリサイタルは、収益の一部を「Smile Piano 500」を通じてピアノとピアノの音を被災地に届ける活動の支援金になるとのこと。穏やかな語りと素晴らしい音楽がコンサートホールを包み込むとてもよいリサイタルでした。私もこのような機会にお仕事をさせていただき嬉しかったです。

会場に到着すると、見覚えのある恰幅のよい調律師さんがピアノの調律中。Facebookのみで繋がりがあった名取孝浩さんで、実際お会いするのはこの日が初めてでした。簡単にご挨拶をして、機材セッティングをしながらホールの響きを確認。演奏前の調律の時間というのは、響きの確認をするのにはとてもよい時間です。ハンマーのノック音、チューニング中のピッチの変化、アリコートの響きなど、変化に富んだ音を部分的に集中して聴くことができます。

ホール内を歩きながら大よそのマイクセッティングのイメージをつくりながら準備を進めます。200席規模の小ホールなのですが、癖が少なく密度が濃い目の残響があります。この日のピアノはBösendorfer225で、バランスの良さを感じる上品な響きがあるピアノです。

おおよそのセッティングが終わったころ、演奏者到着。ご挨拶を済ませて早速リハーサル。この日は会場の前列後方あたりのセンターに立てたステレオペアのワン・ポイントを基軸に、ヴィオラとピアノのオン・マイクを加えていく方針で進めました。コンサートの場合、会場の見栄えの問題もあり、録音するにあたっては必ずしもベストな位置を確保できるとは限らないのですが、ここのホールはセンターに広めの通路があり、また、ステージ上にスタンドを立てることもご了解いただいたので大変助かりました。自然なホールの響きを捉えながらも、演奏の生々しいニュアンスも録音できるようバランスを取りながらレベル設定とマイクの距離を調整します。

演目は、以下の通りで、バラエティに富んだヴィオラとピアノの響きが楽しめる内容でした。特に、レベッカ・クラークの「ヴィオラとピアノのためのソナタ」は、緊張と静寂がダイナミックに織りなされた25分あまりの大曲で、演奏の難しさもさることながら、集中力と体力が必要な難曲です。

1. 5つのフランス古典舞曲(マラン・マレ)

2. 6つのイギリス民謡による組曲(レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ)

3. アダージョとアレグロ Op.70(ロベルト・アレクサンダー・シューマン)

4. 小品 Op.39(エルネスト・ショーソン)

5. ヴィオラとピアノのためのソナタ(レベッカ・ヘルフェリッチ・クラーク)

6. アンコール曲:クロリスに(レイナルド・アーン)

田端さんのヴィオラは良く響くというか、音が突き抜けるように通る音色で、オン・マイクのセッティングに苦労しました。バイオリンともチェロとも違う、ヴィオラ独特の響きが楽しめる録音になったと思います。対して、佐藤さんのピアノは序盤から後半に向けてドンドン音が良くなっていくのでビックリしました。ベーゼンドルファーは、スタインウェイやヤマハと違って、ピアノのケースも響板同様に響かせるよう、フィヒテ材の一枚板の内側に多くの切り込みを入れ、ピアノの形状になるよう加工してあり、響板の延長のように全体が響くようになっています。スタインウェイが鋭く鉄骨の響きを伴うような音の立ち上がりをするのに対して、ベーゼンドルファーは木の響きが漂う感じで、普段スタインウェイ、ヤマハに慣れたピアニストは戸惑うことが多いように思います。しかし、一度タッチと響きの感触に慣れてくると、木が反応して豊かで上品な響きを生み出してくれます。

このあたりは、リハーサル中に、調律師の名取さんが、客席後方に座って響きを確認しながら弾き方のミニレクチャーをしていらっしゃって、演奏者のみならず、関わる人皆がよいコンサートにしようという気持ちが伝わってきました。本番前になって、空調の音だと思っていたのがパイプオルガンの背後に隠すように置かれていた空気清浄器の発する音だったことが発覚。スイッチを切って難を逃れました。これも名取さんにご指摘いただいて恐縮至極。

録音した音源を聴きかえしてしみじみ思うのは、良い楽曲、良い演奏家、良い楽器、良い会場が揃えば、レコーディング・エンジニアはすることがないなぁということ。よい音楽が会場に溢れれば、それを素直に切り取ってあげればいい。そんなことを思いました。

最後に「Smile Piano 500」についてもう少し詳しくご紹介しておきます。調律師の名取さんから帰り際に、この活動について取り上げたラジオ番組のCD-Rを頂き、私もこの活動について知りました。

作曲家/ピアニストである、西村由紀江さんが「東日本大震災で、500台ものピアノが失われた。なんとかしたい」という話を聞きスタートしたプロジェクトで、現在、西村由紀江さんと調律師の方々のネットワークによって、被災地にピアノの音とピアノを届ける活動をしているとのことです。

以下のサイトで「Smile Piano 500」の活動について知ることができます。

「Smile Piano 500」


ルーテル市ヶ谷ホール
 
 
 

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