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ネット配信時代のミキシング&マスタリング考

  • 執筆者の写真: STUDIO 407 酒井崇裕
    STUDIO 407 酒井崇裕
  • 2015年3月30日
  • 読了時間: 4分

更新日:6月10日


iTuneをはじめとして、Youtube、Soundcloudなど、ネット配信による音楽のリリースは加速度的に増えてきているのはご存じの事と思います。誰でも手軽に音源や動画をアップロードしてネット上で発信できる時代になったことは喜ばしいことだと思います。

一方、今現在は、クオリティの高いものから、スナップ的な素材まで玉石混合といった様相ですが、音楽を聴かせていきたいという場合、今後、音質・画質の面で質の低いものは淘汰されていくように思います。

この流れは、Youtubeが4K画質の60fps動画をサポートし、さらなる高画質化へ向かっていることや、AppleもiTunes Plusによって高音質化に向かっていることを見ても感じることができると思います。また、いわゆるハイレゾ音源の配信サイトの取組みも本格的に賑やかになってきました。

このように配信サイトの環境は、高画質・高音質化へ向かって動いていますが、音楽をアップロードする側の音源作成の手法については、まだ確立されたものがないようです。

今回は、これまでのミキシング・マスタリングの方法論から、ネット配信に最適化する手法を考えるという主旨で綴ってみたいと思います。

まず、音楽を届ける形態とミキシング・マスタリングの関係ですが、記録されるメディアの特性に応じて、リスナーが心地よく音を再現できる方法がとられてきました。具体的には、アナログ盤にはアナログ盤に記録再生することを前提とした音質調整の方法があり、CDにはCDに記録再生することを前提とした方法論がある。分かり易い例で言えば、アナログ時代には逆相の音というのは、針飛びの原因になるため記録することが出来ませんでしたが、CDに移行した段階で、逆相の扱いは神経質になる必要がなくなりました。また、デジタル時代になって、ピークを圧縮し、音圧を稼ぐマスタリングが取られ、レベル競争が加速していきました。特にポップス・ロックの世界では、音圧がある音源が好まれ商業的にも有利という認識があるため、デジタル歪を起こさないギリギリまでリミッティングする手法が取られています。本来ダイナミックレンジを広く取れるデジタル録音の特色からすると異論もあるところですが、アナログ時代の音作りとは大きく異なった方法に移行してきています。

このようにメディアに対応した音作りの手法の変遷を見て取れるのですが、現在はネット配信が主になってきており、パッケージメディアとは違う、ネット配信時代のミキシング・マスタリングの手法が新たに求められている状況と思います。

ネット配信に対応する音作りでポイントとなるのは、データ圧縮による音質・画質の変化です。無圧縮のデータと比較すると圧縮する分だけ質が劣化することは避けられません。この劣化程度を最小限もしくは劣化なしでエンコードする技術が競って開発されていますが、オリジナルと比較すると、やはり違いが出てしまします。

具体的には、音の密度が希薄に感じたり、高域が落ちて空気感が損なわれるような音になる傾向があります。この劣化を前提に、圧縮しても心地よく聞こえるようにミキシング・マスタリングを施すというのが、ネット配信時代の音作りと言えると思います。

これまで、最終音源を仕上げた後、配信用に圧縮処理をした場合、まあ、圧縮による劣化は仕方ないとして、あきらめてしまう場合が多かったと思うのですが、圧縮してもオリジナル音源で受ける音の印象に近づけるよう事前にオリジナル音源の調整を施すのが「ネット配信時代のミキシング&マスタリング」の意図するところです。エンコード(圧縮)したときの音とオリジナル音源と、リアルタイムで比較試聴しながら音作りできるツールも出てきていますので、ネット配信に最適な音作りができる環境も整ってきました。

もうひとつ、留意すべき点は、配信サイトがどのコーデックを採用しているのかを確認しておくことです。例として、Youtubeで処理されるコーデックを以下に記しますが、オリジナルデータをアップロードするとYoutubeのサーバ側で、このコーデックで再エンコード処理が行われます。

アップロードするオリジナルデータとYoutubeで再生される画質・音質が違ってしまうのは、この再エンコード処理が原因です。従ってアップロードするデータを作成する際は、Youtubeで採用しているコーデックで作成しておくと画質・音質変化が推測できるので、オリジナルと大きく変わってしまったという事態を避けられます。本当は、Youtube側での再エンコードを避けることができればベストなのですが、現在のところ、同じコーデックで作成したデータをアップロードしても、Youtube側での再エンコードはされてしまうようです。

しかしながら、コーデックをサーバ側と揃えてデータを作成しておくことは、質の確認とアップロード時間の短縮、劣化の最小限化という点でメリットがあると思われます。

このような点を留意し、一般的にされるアップロードと、配信用にミキシング・マスタリングを施したデータアップロードの比較ページを作成しましたので、ご覧ください。


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運営統括責任者

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