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  • 執筆者の写真Takahiro Sakai

五反田文化センターでのピアノレコーディング

更新日:2021年8月21日


4月6日に五反田文化センター・音楽ホールでピアノのレコーディングをしてきました。このホールは前から気になっており、どんな響きがするのか楽しみにしていました。レコーディング内容は「とも奈」さんのポップスのヒット曲をピアノにアレンジしたCDアルバムの制作のためのもので、全11曲を滞りなく終えました。繊細なタッチをもったピアニストの方で、ピアニッシモの美しい響きが印象的な演奏でした。五反田文化センターを選択したのが好結果につながったと思います。

五反田文化センター・音楽ホールは株式会社永田音響設計によって設計され、区内随一の質の高い音響を誇っています。キャパは250席の小規模音楽専用となっており、側壁はノコギリ状の折板形状で、壁からの早い時間の反射音が後方席の中央にまで均等により多く到達するようにそのひとつひとつの面の角度を設定しています。また、壁の中段には聴衆や演奏者への反射を意図した“ひさし”を設けており、デザイン性を考慮し、材質にガラスを採用。壁の背後から光を当てることで、デザイン照明としても機能するように設計されています。天井の高さも十分に確保され、透明感のある響きと、芸術性を感じさせる空間はレコーディングにはピッタリです。


レコーディング・セッションが始まる前の調律作業中に、ピアノの単音を収録してみましたので、お聞きください。打弦とその後の響きを切り分けて、時間軸に沿って響きが伝搬していく様子が認識できるように、編集をしてあります。波形の図に音の順番を記して、より分かりやすいようにしてあります。


図を見ながら、ピアノの音を聞くと最初に大きな音が出てそれが急速に小さくなり、その後、大きさの変化は小さくなり、時間をかけて音が小さくなっていく様子が分かると思います。この音の大きさの変化の様子は2段減衰と呼ばれており、ピアノ音の特徴のひとつです。2段減衰については、複数弦の挙動の影響と弦の回転運動が寄与していると考えられています。一つのハンマーで同時に打弦された複数の弦は、一緒に運動して駒の振動を引き起こしますが、この時、複数の弦を引っ張る力のわずかなずれによって次第に駒に力を及ぼすタイミングが変化し、最終的には、弦から駒に及ぼす力がお互いに打ち消し合うタイミングに落ち着くと考えられています。

また、この音を聞くなかで見逃せないのは、打弦された直後、衝撃音がピアノの駒、響板、フレーム、ピアノ全体と瞬時に伝搬した後、その音がホールに向かって放射され、豊かな残響が広がっていく様子が聞こえることです。質のよいヘッドフォンで聞くと、よりリアルに分かると思います。

単音ではなく、実際のピアノ演奏においても、この物理現象が生じているので、織りなすピアノの響きがいかに複雑であるかが分かるものと思います。それゆえ、あの豊かで表情溢れる音を出すことができる。加えて、ホールも楽器の一部であることも分かりますね。

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