2020年12月18日に横浜市青葉区区民センター・フィリアホールでサクソフォン・リサイタルの収録をしてきました。演奏者は、サクソフォン:田村真寛さん、ピアノ:黒岩航紀さんです。
「交錯する血、文化」と題されたこのリサイタル。動と静を織り交ぜたヴァラエティに富んだ演目のプログラミングでしたが、そこには通奏低音のように貫かれたテーマのようなものを感じました。プログラムに記された田村さんの文章には、このリサイタルで演奏された作品のひとつ「ランサローテ」を作曲した佐藤聰明さんの著書「耳を啓(ひら)く」の一節が紹介されていました。
「音は沈黙より生まれいで 生涯を送り やがて終焉を迎え 沈黙の彼方に飛び去る」
私達は日々、二度と起こらない瞬間瞬間を積み重ねて生きていますが、これと同様に音楽は時間芸術であって、様々な背景を持って産み落とされたひとつの生命体であり、また、これを奏する時間もひとつの生命の営みであるということに思いが至ります。そうした観点で演目を眺めると、躍動する命の喜び、静謐ながらも滔々と流れる特別な時間、若い息吹に満ちた曲などが並んでおり、プログラム全体も連なるひとつの生命の物語として感じられる密度の濃い内容でした。
田村さんと黒岩さんの演奏も素晴らしく、お二人がこの日に込めた思いが伝わってきました。ご来場されたお客様も、この日この場でお二人の奏でる音楽に出会うことができた喜びを感じられたのではないかと思います。
横浜市フィリアホールはキャパ500席のクラシック音楽主体のホール。世界的に著名なフランスの建築家ジャン・ミッシェル・ヴィルモット氏をゲスト・デザイナーに迎え、ヨーロッパの格調を感じさせるエレガントで温かみのある佇まいが印象的。伸びやかな残響(1.6秒~1.8秒:空席時、1.5秒~1.7秒:満席時)もクラシックには最適と言え、お二人が奏でる心地よい響きがホールを満たしました。
収録した中から1曲ご紹介します。
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