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  • 執筆者の写真Takahiro Sakai

日本文化サロン主催 管谷怜子さんピアノリサイタル 

2月17日に日本文化サロン主催、管谷怜子さんのピアノリサイタルを収録してきました。「ブラームスの激情、シューマンの詩情」と題されたこのリサイタルの演目は、ブラームスのピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 作品5、休憩を挟んで、シューマンの交響曲的練習曲 作品13でした。この2つの作品は、どちらもピアニストさんには骨の折れる難曲として知られています。テクニック的な要素もさることながら、作曲された当時の時代背景や、作曲者と当時の人々の心情と人間模様に思いをめぐらせる曲でもあり、管谷さんがどのような解釈でこれらの音楽を奏でるのか楽しみにしていました。


演奏会の冒頭、日本文化サロン代表の小川榮太郎さんより、演目についてのお話がありました。クララという存在を軸とした人間模様と作曲家との関わり、また、これらの曲をどのように演奏するのかという音楽表現についての解説、そして、管谷怜子さんというピアニストとの出会いについて語られました。文藝評論家として、また、音楽評論家としても名高い小川さんのお話は含蓄に富む内容で、その慧眼によって見出された管谷さんが、いったいどのような演奏を聴かせてくれるのか期待は膨らみます。


演奏会場は都内某所にある、約80名ほどのキャパがあるプライベートホール。天井の高さも充分にあり、一見しただけで専門的な音響設計が施されていることが分かります。初期反射も綺麗に処理されており、明るくブリリアントなピアノの響きが持ち味になっている空間だと感じました。管谷さんと小川さんは、開演前のリハーサルでピアノのタッチの具合とこの空間の響きの感じを確かめながら調整を進めていらっしゃいました。


本番では、確かなテクニックに裏打ちされた表現力で、ご来場されたお客様を管谷さんの描く音楽世界へ引き込んでいくのが分かります。皆さん目を閉じながら、じっと聴き入っていらっしゃいました。とくに感じるのは音色の豊かさとダイナミックレンジの広さ。ピアニッシモは語り掛けるような繊細さを宿しており、フォルテッシモではピアノ全体が鳴り響いて激情の表情を描きます。


演奏を聴きながら、ピアノの音色とテンポということについて改めて考えさせられました。一般にタッチと音色の関係については幅広い研究がなされていますが、演奏するテンポの違いによる音色の変化も音楽表現という観点から大きな要素なのではないかと思います。

ピアノという楽器は、弦楽器や管楽器など、他の楽器とは違い、打鍵した後は、奏者のコントロールがほぼ不可能な発音機構になっています。つまり持続音にヴィブラートをかけたり、強弱を変えたりすることはできず、打弦後の持続音は自然減衰するのみで、ペダル操作が唯一のコントロール手段であると言っても過言ではないと思います。その意味で、ピアノというのは非常にストイックな楽器であるとも言え、物理的な意味で、表情を出すのが難しい楽器であると思います。こうしたことを考えるとタッチに加え、テンポの速さ遅さの程度によって、時間軸に沿ったピアノの持続音と鳴りの程度、すなわち音色の豊かさが異なってくることは自明であるように思われます。


演奏会の冒頭、小川さんが曲の解釈と表現といった意味において演奏テンポの違いについて鋭く指摘されておられました。音を扱う私としては、音色の豊かさについてもテンポが深く関係してくるのではなかと考えを巡らせることになりました。

管谷さんの演奏は、今日一般に聴くことが出来るテンポとは違い、ある種、往年の巨匠を想起するような柔軟性に富んだ演奏で、まさに、「ブラームスの激情とシューマンの詩情」の世界を描いていらっしゃいました。今後もリサイタルの予定が組まれているそうで、これからのご活躍が楽しみです。


当日の演奏から、ブラームスの第1楽章をご紹介します。

ブラームス / ピアノソナタ第3番 へ短調 作品5 第1楽章


日本文化サロンでは、今後も音楽に限らず、文化・学術界等、幅広いジャンルから厳選された珠玉の企画を開催していく予定だそうです。ご興味がありましたら、以下、ホームページをご覧ください。


日本文化サロン公式ホームページ



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