1月14日に自由学園明日館のラウンジホールで岡本卓徳さんヴァイオリンリサイタルを収録してきました。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ 第1番、2番、3番を中心に、塩飽桃加さんのラヴェルのピアノソロを挟んだ内容で、会場の雰囲気に合ったしっとりとした時間が流れました。
自由学園明日館は豊島区西池袋に所在しており、1921年(大正10)女学校として創立されました。創立者は、羽仁もと子・吉一夫妻で、知識の詰込みではない、新しい教育を実現することを目指しました。生徒に自ら昼食を調理させるなど、生活と結びついた教育は大正デモクラシー期における自由教育運動の象徴と言えます。印象的な建築は、アメリカが生んだ巨匠フランク・ロイド・ライトと、その弟子の遠藤新の設計になる建築で、1997年に国の重要文化財に指定されました。
演奏会場となったラウンジホールは、前庭を臨む幾何学模様の大窓を配し、室内は歴史を感じさせる佇まいで、ホールの壁画が印象的です。この壁画の存在は以前から古い写真の記録で確認されていましたが、厚く塗られた壁の下にあり、1999年3月から2001年9月にかけての保存改修工事の際に発見され、現在では色鮮やかな姿で蘇ったそうです。旧約聖書出エジプト記に材をとった、自由学園校歌の一節がモチーフとなっており、当時の生徒たちの手によって描かれました。
リサイタルは、こうした大正ロマンを感じる会場にピッタリの選曲で、手触り感のあるアップライトピアノの響きと、岡本さんのヴァイオリンの音色が溶け合って、当時の人たちもこうした演奏会を楽しんだのだろうなと思わせる素敵な演奏会でした。
岡本さんと塩飽さんは東京藝術大学でのご学友だそうで、これからの活躍が楽しみですね。
当日の演奏から一曲、ご紹介します。
ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 作品108 第二楽章
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